十夜ヶ橋

わが故郷、大洲には少しさびしい伝説があります。
その昔、弘法大師が四国を修行で巡行していたとき、大洲ではただの一軒も宿を貸りられなかったそうで、橋の下で凍えて一夜を過ごしたそうな。
十夜ヶ橋』という番外の霊場になっています。
一夜なのに十夜分に感じるほど辛かったそうな。

そのせいなのか、どうなのか。後にお大師様は四国の隅々に八十八ヶ所の霊場を開いてゆかれましたが、愛媛の43番から44番までが不自然なほど間が空いています。
そこが大洲。


1200年後の今に伝わる霊場作りの大事業のさなか、
一夜の恨みを忘れなかったのか?お大師様。
あまりに人間らしくて、好きです。




みすぼらしい身形で軒を借りにきたお坊さんが、実は弘法大師だったと知った大洲の人たちは、おおいに悔やんだそうな。


くうかい先に立たず』