臨死体験

健康には自信のある私だが
一度だけ死にかけたことがある。
そんな臨死体験を、

昔語りに・・・



二十歳の頃会社の先輩が手術をするのにB型の『血漿』が必要とかで、
献血をすることになった。
血気盛んな若者であった私は、血なんか有り余って何なら鼻から
時々噴出すほどだったので喜んで協力したものだった。


成分献血』とのことで腕の血管から出て行った血を分離機にかけて、
血漿を取り、残りの成分を生理食塩水で薄めて
反対の腕の血管にもどすのだそうだ。


さて、準備が整い私の血管から勢い良く血液が流れ出した。
「しっかりお役に立つのだぞ」と赤く脈打つ血液を見送る私でした。


「気分が悪くなったら言ってくださいねー」とキレイな看護婦さんが言うが、
男のメンツにかけて平静を装おう、・・・とする間も無く気分が悪くなったきた。
「スミマセン、気分悪いデス・・・」
ナースはにっこり微笑んで、
「ちょっと待ってくださいね」といってなにやらポケットから出して
ガサゴソしたのち、
「ハイッ、口を開けてください」というので、薬?を求めて「アーン」をすると
口の中に飴玉がコロン。黒糖のど飴。
「緊張して気分悪くなる事があるんですよ」とにっこり微笑む天使の笑顔。
必死に作り笑顔で微笑み返す私。
しかし天使の顔もぼやけ、視界は狭くなり、耳鳴りがし、飴が口からこぼれ、
うっすら残った光の中に天使の困惑した顔が・・・


「死にそうデス・・・」
私の尋常でない訴えに呼ばれた医師が、
あっ大変っ!といいながら何やら機械を触ると、
私の腕の静脈に地獄のように冷たい液体が一気に流れ込み、
一瞬で意識は途切れ、音も光もない世界へ落ちて行ったのでした。



こうして貴重な臨死体験をしたわけですが、


医者の言うには「食塩水のバルブが閉まっていて」「もどす血液が薄まらず」
「静脈に流れてこなかったため」らしい。
ようするに血がどんどん出て行って、一滴も帰ってこない状態だったそうなー。



こうして私の病院嫌いは決定付けられました。
私の目の黒いうちは一滴たりとも血はやらねーぞ!