デンデケデケデケ

サザンオールスターズがデビューした年の夏休み。
高専の2年生だった僕は地元の友達とバンドを組んでいた。
十夜ヶ橋のお大師様の縁日に開かれるのど自慢大会での伴奏を
地元の青年団に頼まれた臨時のバンドだ。
いっこ年上のSちゃんがリーダーでリードギター
僕をふくめサイドギターが二人いてドラムとベース。

当時、カラオケはまだ普及していなかったので、
出場者の歌う曲目が事前に渡されて、僕らはその曲の楽譜を探したり
耳コピしたりして練習した。

曲目は『女のみち』とか『くちなしの花』みたいな演歌が多かった。
のど自慢といえば演歌の時代だ。
よく覚えているのは、内山田洋とクール・ファイブの『中の島ブルース』で
ドラムのK太郎は三連符が叩けなくて練習中何度もスティックを放り投げた。


審査の間に何曲か演奏していいよ、と言われていたので
流行っていたサザンの『勝手にシンドバッド』をやろうとしたが、
誰も歌えなかった。
世良正則&ツイストの『あんたのバラード』はどうだ?となったが、
これも歌えない。
僕たちのバンドにはヴォーカルがいなかったのだ。


結局ベンチャーズの『パイプライン』や『ダイヤモンドヘッド』等を
何曲か演奏した。
中学校の卒業式の予餞会以来、人生二度目のステージ体験だった。


夏休みが終わる日に『ソラニン』を読み返していて
懐かしくなって書いてみた。


人前で演奏することはもう無いけれど、
手元に数本のギターとピアノとベースがあって、
時おり思い立って練習する時間があって、
音楽とつかず離れずつきあっていけるのは
しあわせだな。