13番目のカスタネッター

学芸会の思い出

子供の頃から歌が大好きだった。
歌手になりたいと思っていた。
大好きだったが、歌でほめられたことは一度も無い。

小学2年の頃「黒猫のタンゴ」という歌が大ヒットした。
休み時間に友達と競い合って歌っていたら、先生が来て「A君は歌い方が似とるね」とか「B君はリズムがいいね」とかほめてくれた。
自分の番が来て張り切って歌ったら先生はニコニコして何も言わなかった。
子供の私には自分の好きなものが上手でないという事が理解できてなかった。
好きなものは上手にできるはずだった。



小学4年の学芸会だったか初めて合唱の組になった。(演劇か器楽合奏か合唱のどれかに出ることになっていた。)
歌は名曲『クラリネットをこわしちゃった』 大好きな歌だった。
はりきって人一倍大きな声で練習を重ねた。

そんなある日・・・。 

合唱の練習中、音楽の先生が私のところに来て
「くびたおる君、器楽の人数がどうしても足らんのよ、来てくれん?」と申し訳なさそうに言った。




学芸会当日、13番目のカスタネッターとして器楽合奏を終えた私は、
歌うはずだった『クラリネットをこわしちゃった』を客席でうつむいて聴いていた。



パオパオパ・・・  ・・・オパ